地球（テレクラ）へ…

コールドスリープを思わせる長い眠りを繰り返す日々のなかで見続けていたあの不思議な夢の数々が、すべて「テレクラの夢」だったということが、テレクラという「出会い」と「テレフォンセックス」の惑星へと帰還した今ならわかる。

コックピットという母胎空間との一体化を連想させる姿勢、布団のなかに深く沈み込んで身体をうずめたあの眠りの姿勢のなかで見た「テレクラの夢」たちを、やがて、実際にテレクラを利用することになってからは、「正夢」として丁寧になぞっていくようだったのだから。

「テレクラの夢」を見るときにとる「眠りの姿勢」は、のちに現在のようなテレクラのヘビーユーザーとなってから「『個室テレクラ』という空間こそが、自分にとっての『母胎＝コックピット』であったのだ」という目が眩むような発見と「繋がり」を持つことにもなるのだが、そのころはまだテレクラを一度も使ったことがなかったのだし、私は「テレクラの夢」をまだ「不思議な夢」としか思えない段階ですやすやと眠っていた。

眠りに落ちた自分のもとへ訪ねてくる夢のすべてが「テレクラの夢」であるということを知らないまま、自分は、そのときはまだ使ったことがなかった「テレクラのすべて」をすでに身をもって経験していた。

盲目の美少女と青年がそれぞれ暗黒空間の孤独におかれて、通信手段を利用しながらなにかを話している、という光景を毎晩の眠りのなかで見ることになったが、その光景は、テレクラのツーショットダイヤルの持つ集合的無意識が自分のなかに一挙に流れ込んできて見せていたものだったのではないか。

盲目の美少女と青年の会話は、夢を見る日によって少しずつ微細に変化しており、何気ない日常会話をしている夢もあれば、若者のほうが暗黒空間の向こう側にいる美少女になにか熱を込めて語りかけているような夢もあった。

盲目の美少女の身体が暗黒空間のなかで光り輝くようになり、熱を帯びて上気している一方で、若者の股間からは白い閃光が彗星としてほとばしり、そして、暗黒空間をつんざくようにして二人の歓喜の声が響く、そんな夢も、何度も繰り返し見たものだった。

それらは、テレクラを利用する男女の「即アポの交渉」や「濃厚テレフォンセックス」の回線を繋ぎつづけた「テレクラ」が眠りに落ちて、私の身体を媒介してあらわれた「テレクラの見た夢」だったのだろう。

私がテレクラの夢を見ているのか、それとも、テレクラが私の夢を見ているのかは、次第にわからなくなっていったし、実際にテレクラを利用するようになって、即アポ＆即ハメ、そしてテレフォンセックスを生身で経験するようになると、「覚醒している」という意識以上に、「自分は目覚めながらテレクラの夢のなかにいる」という感覚が強まりもしたものだった。

テレクラという場所は私が「そこからやってきた場所」であり、「やがて魂が還るべき場所」であった。

広大な宇宙空間を漂流したさきで私をまっていた「ふるさと」の星であるテレクラの利用を通して、私はやがて、夢のなかで何度も即ハメとテレフォンセックスを繰り広げたあの美少女の面影を宿したドスケベテレクラ女子との生身の出会いに到達することになるのだ。

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